「いつか子どもを」と考えているけれど、相手はまだ決まっていない。そういう状況で選択肢のひとつになるのが卵子凍結です。何ができて何ができないのか、いつ考え始めるものなのかを説明します。
卵子凍結とは何をするのか
卵巣から卵子を採取して、凍結保存しておく方法です。将来、妊娠を望む時期になったときに融解して使います。
医学的な理由(がん治療の前など)で行う場合と、将来に備えて健康な方が行う場合(社会的卵子凍結)があります。婚活中の方が検討するのは後者です。
大まかな流れは、①ホルモン剤で卵胞を育てる → ②採卵する → ③凍結保存する、の3段階です。通院は複数回必要で、採卵は日帰りで行われるのが一般的です。
できること・できないこと
| 内容 | |
|---|---|
| できること | 採卵した時点の卵子を保存しておける。将来の選択肢をひとつ増やせる |
| できないこと | 将来の妊娠を保証すること。凍結した卵子がすべて使えるとは限らず、妊娠に至るかどうかも分かりません |
凍結した卵子を使えば必ず妊娠できる、というものではありません。融解後に使える状態である割合、受精する割合、着床する割合、それぞれに個人差があります。また、何個凍結すれば十分かという基準もありません。「これをやっておけば安心」という性質のものではなく、可能性をひとつ残しておく手段だと理解してください。実際の見通しは、検査を受けたうえで医師の説明を聞いて判断する必要があります。
考え始める時期
一般に、採卵できる卵子の数も質も、年齢とともに変化します。そのため、検討するなら早いほうが選択肢は広くなります。
ただし、早ければよいというものでもありません。次の点も併せて考える必要があります。
- 保存には継続的な費用がかかる。毎年の保管料が発生します
- 使わずに終わる可能性もある。自然に妊娠する方も、子どもを持たない選択をする方もいます
- 体への負担がある。ホルモン剤の使用と採卵の処置を伴います
「やるべきかどうか」に一般的な正解はありません。まず自分の卵巣の状態を検査で知り、そのうえで医師と相談して判断するという順序が現実的です。
費用と、体への負担
社会的卵子凍結は、原則として自費診療です。採卵にかかる費用と、その後の保管料が別に発生します。金額は医療機関によって大きく異なるため、検討する際は総額と、年ごとの保管料を確認してください。自治体によっては助成制度がある場合もあります。
体への負担については、ホルモン剤による副作用や、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)などのリスクが知られています。頻度も程度も個人差があります。事前に説明を受け、納得したうえで進めてください。
実際の流れを、時期ごとに
「採卵する」という一言で語られがちですが、実際には複数の段階があり、それぞれに時間がかかります。
1. 相談と検査。まず、卵巣の状態やホルモンの状態を確認します。この結果によって、そもそも適しているかどうか、何個くらい採れそうかの見通しが変わります。
2. 卵巣を刺激する期間。複数の卵子を育てるため、一定期間にわたって薬を使います。この間、数日おきの通院が必要になります。注射を自分で行う場合もあります。
3. 採卵。短時間の処置ですが、麻酔を使うため、当日は付き添いや安静が必要になることがあります。
4. 凍結・保管。採取した卵子を凍結し、保管します。保管には、毎年費用がかかります。
5. 将来、使うとき。融解し、受精させ、子宮に戻すという段階が必要です。ここにも別途、費用と体への負担が生じます。
1回の周期にかかる期間は、およそ2週間から1か月程度です。そして、1回で十分な数が採れるとは限らず、複数回行う場合があります。仕事や生活の予定と、どう調整するかを考えておく必要があります。
体への負担と、起こりうること
医療行為である以上、負担とリスクがあります。ここを理解したうえで判断してください。
- 卵巣を刺激する薬の影響。お腹の張り、体調の変化が生じることがあります。まれに、強い反応が起こることがあり、その場合は治療が必要になります
- 採卵時の負担。出血や感染など、処置に伴うリスクがあります
- 通院の負担。数日おきの通院が必要な時期があり、仕事との調整が要ります
- 精神的な負担。結果に一喜一憂する時期が続きます
- 採れる数には個人差があります。予定より少ないこともあります
これが、いちばん重要な点です。凍結した卵子が、必ず妊娠につながるわけではありません。融解の過程、受精の過程、着床の過程——それぞれに確率があります。「保険をかけた」という感覚で受けると、実際の結果との差に苦しむことがあります。「選択肢を残す」という理解が、いちばん実態に近いといえます。
費用の、現実的な内訳
費用は、1回の採卵だけでは終わりません。総額で考えてください。
| 段階 | 費用がかかる項目 |
|---|---|
| 事前 | 診察、血液検査、超音波検査 |
| 刺激の期間 | 薬剤費、複数回の通院・検査 |
| 採卵 | 処置、麻酔 |
| 凍結 | 凍結の処理費用(個数によって変わる場合があります) |
| 保管 | 毎年の保管料。10年預ければ、10年分かかります |
| 将来使うとき | 融解、受精、移植。ここが別途必要です |
複数回の採卵が必要になれば、その分だけ増えます。そして、使わなかった場合、それまでの費用は戻りません。
助成制度がある場合があります。自治体によっては、費用の一部を補助する制度を設けているところがあります。年齢や回数に要件があり、内容も変わることがあります。お住まいの自治体の公式サイトで、最新の情報を確認してください。
医療機関によって費用は異なります。総額(保管料を含む)を、事前に必ず確認してください。
検討するときに、確認すべきこと
相談に行く前に、整理しておくとよい項目があります。
自分について
- 子どもを持つことを、どれくらい希望しているか
- いつごろまでに、と考えているか
- 費用を、どこまで負担できるか。保管料を含めて
- 通院の時間を、確保できるか
医療機関に聞くこと
- 自分の状態で、どのくらいの数が見込めるか
- 1回の周期にかかる期間と、通院の回数
- 総額(保管料を含む)
- 起こりうる合併症と、その対応
- 保管の期限と、期限が来たときの扱い
- 他の医療機関へ移す場合の手続き
- 使用できる条件。婚姻の状況などに関する要件がある場合があります
最後の2つは、見落とされがちです。長期にわたって預けることになるため、転居や、医療機関の状況が変わった場合にどうなるかを確認しておいてください。
まず、状態を知ることから
卵子凍結を受けるかどうかを決める前に、やっておくべきことがあります。
1. 現在の状態を検査で確認する。卵巣の状態、ホルモン、子宮の状態。この結果によって、判断の前提が変わります。ブライダルチェックで、内容をまとめています。
2. 年齢と妊娠の関係を、正確に理解する。不安をあおる情報も、楽観的すぎる情報も出回っています。年齢と妊娠をご覧ください。
3. 婚活の進め方を見直す。これは意外に思われるかもしれませんが、重要です。相手が決まれば、選択肢はまったく変わります。凍結を検討する時間と費用を、婚活の方法を変えることに使うという選択もあります。アプリの4つのタイプと30代女性の婚活をご覧ください。
4. 複数の医療機関で相談する。説明の内容や、勧められる方針が異なることがあります。その場で契約を急がされる場合は、持ち帰ってください。
そして、受けないという判断も、まったく問題ありません。これは選択肢のひとつであって、受けるべきものではありません。自分の状態を知り、選択肢を理解したうえで決める。それが、いちばん後悔の少ない進め方です。
決める前に、整理しておくこと
費用も体への負担も大きい選択なので、紙に書き出して整理してみてください。
1. 何のために受けるのか
- 子どもを持ちたい気持ちが、どのくらい強いか
- いつごろまでに、と考えているか
- 受けることで、何が変わると期待しているか
2. 現実的に、続けられるか
- 費用。採卵の費用に加えて、毎年の保管料が続きます。10年預ければ10年分です
- 通院。刺激の期間は、数日おきの通院が必要です。仕事と両立できるか
- 複数回になる可能性。1回で十分な数が採れるとは限りません
3. 使わなかった場合を、想像してみる
結果的に使わずに終わる可能性もあります。そのとき、「受けてよかった」と思えるか。「安心のために払った費用」と考えられるなら、それも判断のひとつです。
4. 他の選択肢と、比べる
同じ費用と時間を、婚活の方法を変えることに使うという選択もあります。相手が決まれば、状況はまったく変わります。どちらが自分にとって現実的かを、考えてみてください。
この4つを整理したうえで、複数の医療機関で相談してください。その場で決める必要はありません。
保管している期間の、過ごし方
受けたあと、保管している期間をどう過ごすかも、考えておいてください。
1. 「保険をかけた」と考えすぎない。凍結は妊娠を保証するものではありません。安心して時期を先送りすると、期待と結果に差が生じることがあります。
2. 婚活は、並行して進める。これがいちばん大切です。凍結したことで、かえって動きが止まってしまう方がいます。相手が決まらなければ、使う機会もありません。
3. 保管料の支払いを、忘れない。更新の手続きが必要な場合があります。支払いが滞ると、どうなるかを確認しておいてください。
4. 連絡先の変更を、届け出る。転居や、電話番号の変更。連絡が取れなくなると、確認の通知が届きません。
5. 使用の条件を、確認しておく。婚姻の状況などに関する要件が定められている場合があります。受ける前に確認しているはずですが、状況が変わったら再確認してください。
6. 定期的に、自分の状態を確認する。凍結したからといって、体の状態を確認しなくていいわけではありません(ブライダルチェック)。
7. パートナーができたら、伝えるかを考える。結婚を考える段階では、伝えておくほうが自然です。費用も、将来の選択にも関わることだからです。
そして、受けたこと自体を、負い目に思わないでください。選択肢を残すために動いた——それは、前向きな判断です。
よくある質問
婚活中に卵子凍結をするのは、焦っていると思われませんか?
何個くらい凍結すればいいですか?
凍結した卵子は、いつまで保存できますか?
何歳までに受けるべきですか?
凍結したら、安心して婚活を続けられますか?
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