条件で絞り込み、写真で判断し、数をこなす。いまの婚活の主流はこの形です。けれど、それに疲れてしまう人も少なくありません。もうひとつの考え方として、昔からある「縁結び」という捉え方を紹介します。
「縁」とは何を指す言葉か
縁という言葉は、もともと仏教に由来します。物事が生じるための条件やつながりを指す考え方で、ひとつの出来事は単独では起きず、いくつもの条件が重なって生まれるという捉え方です。
人と人の関係に当てはめると、こうなります。誰かと出会うのは偶然に見えて、実はその前のいくつもの選択が重なった結果である。そして、出会っただけでは関係は生まれず、そこから何かを重ねていって初めて縁になる、と。
「縁結び」とは、この重なりを意図的につくる働きかけのことです。日本では古くから、この役割を担う人がいました。
条件で選ぶことの限界
年齢、年収、身長、居住地、学歴。条件は分かりやすく、比較しやすい情報です。だからこそアプリでは前面に出ますし、絞り込みの役にも立ちます。
けれど、条件には限界があります。
- 条件が揃っていても、一緒にいて疲れる相手はいる。数字に表れない相性のほうが、日々の生活には効きます
- 条件で選ぶと、自分も条件で選ばれる。比較される側に立ち続けることは、想像以上に消耗します
- 条件は変わる。収入も住む場所も健康状態も、10年後には違っているかもしれません
条件を無視しろということではありません。条件は入口であって、そこで終わらせないことが大切だという話です。
縁は、結ぶだけでなく育てるもの
出会いを「運命の一瞬」と考えると、うまくいかなかったときに「この人ではなかった」と結論を出しがちです。でも実際は、多くの縁は最初から完成していません。
会って、話して、少しずつ相手を知って、こちらのことも知ってもらう。その積み重ねのなかで、「この人となら」と思える瞬間が訪れます。関係は出会った時点で決まっているのではなく、そこから育てるものです。
1回会っただけで判断すると、その日の体調や場所の雰囲気に左右されます。緊張して話せなかっただけの人を、「合わない」と切ってしまうこともあります。可能なら3回。それで見えてくるものは、初回とはずいぶん違います。
今日からできる、縁を育てる進め方
- 1人ずつ、丁寧に。同時に多くの相手とやりとりすると、一人ひとりへの向き合い方が薄くなります
- 相手の言葉を覚えておく。前に話したことを次の会話で拾うだけで、関係の深さが変わります
- すぐに結論を出さない。「ピンとこない」の多くは、まだ相手を知らないだけです
- 自分の話もする。質問ばかりでは面接になります。相手にも知ってもらう時間が必要です
- うまくいかなくても、否定しない。合わなかっただけで、どちらが悪いわけでもありません
効率だけを考えれば、遠回りに見えるかもしれません。けれど、急いで進めた関係ほど、同じ速さで終わっていきます。
「縁がなかった」という言葉の使いどころ
うまくいかなかったとき、「縁がなかった」と言うことがあります。この言葉は、使い方によって助けにも逃げにもなります。
助けになるのは、自分を責めすぎないために使うときです。断られた理由は、相手の状況や、そのときのタイミングであることが大半です。自分に欠けたところがあったからだと考え込むより、「合わなかった」と受け止めるほうが、次に進めます。
一方で、逃げになるのは、振り返るべきことまで運のせいにするときです。写真が暗い、自己紹介文が3行しかない、返信が1週間空く。こうした具体的な原因があるのに「縁がない」で片付けてしまうと、同じことが繰り返されます。
使い分けの目安は簡単です。直せることが思い当たるなら、直す。何も思い当たらないなら、縁の話にしていい。この順序であれば、言葉に助けられます。
条件で絞ることの、良い面と限界
条件で相手を絞ることは、悪いことではありません。時間には限りがあるので、ある程度は必要な作業です。ただ、絞り方には向き不向きがあります。
条件で絞るのに向いていること
生活に直接影響する項目は、条件として扱って構いません。住んでいる場所、勤務の形態、喫煙の有無、子どもを望むかどうか。これらは後から変わりにくく、合わないと日常が続きません。先に絞ったほうが、お互いのためになります。
条件で絞るのに向いていないこと
一方で、年収、身長、学歴といった項目は、絞りすぎると候補が急に減ります。しかも、これらは一緒に過ごしたときの心地よさとは、あまり関係がありません。
実際に交際が続いている人に話を聞くと、決め手として挙がるのは「一緒にいて疲れない」「話していて楽しい」「価値観が近い」といったことが多く、条件の項目そのものが挙がることは、あまりありません。
条件は、候補を100人から20人に絞るために使う。そこから先は、実際に話してみて決める。この順序が、無理のない進め方です。
縁を育てる、具体的な行動
縁は、出会った瞬間に決まるものではありません。育てるものだと考えると、やることがはっきりします。
相手の話を覚えておく。前回の会話で出た仕事の話や、行きたいと言っていた場所。次に会ったときに触れられると、相手は「聞いてもらえている」と感じます。特別な技術は要りません。メモしておくだけで十分です。
返信の速さをそろえる。自分だけが長文をすぐ返し、相手が数日後に短く返す。この状態が続くなら、温度差があります。相手のペースに近づけると、負担が減って続きやすくなります。
会う場所を、相手に合わせて選ぶ。相手の家から近い場所、静かで話しやすい店。こうした配慮は、言葉にしなくても伝わります。
断られたときに、丁寧に引く。「残念ですが、ありがとうございました」と返せる人は、印象に残ります。何度も食い下がると、その逆になります。
すぐに答えを求めない。3回会って判断できないこともあります。相手にも考える時間が必要です。
縁は、人を介して広がることもある
アプリで自分から探すことと、人に紹介してもらうことは、対立するものではありません。両方あってよいものです。
昔から、地域には縁を取り持つ役割の人がいました。相手の人柄を知っている人が間に入ることで、条件だけでは分からない部分が伝わります。この機能は、いまでも価値があります。
実際、結婚相談所や仲人型のサービスが続いているのは、その役割が必要とされているからです。担当者が両方の話を聞いて、条件表には出てこない相性を考えて紹介する。断りの連絡も間に入って伝える。この仕組みがあるだけで、進めやすくなる人は多くいます。
自分で探すことに疲れたら、人の手を借りる。どちらか一方を選ばなければならない理由はありません。
日本には、縁を結ぶ仕組みがあった
「縁結び」という言葉は昔からありますが、それを支える具体的な仕組みが、社会の側に用意されていました。
仲人(なこうど)です。地域や親族の中に、縁談をまとめる役割の人がいました。相手の家柄、人柄、暮らしぶりを知ったうえで引き合わせ、話がまとまるまで間に入る。断るときも、直接ではなく仲人を介しました。
この仕組みには、いまの視点から見ても優れた点がありました。
- 身元が確かめられていた。知っている人が間に入るため、素性の分からない相手と会うことがありません
- 断ることの負担が小さかった。本人同士が直接やりとりしないので、角が立ちません
- 迷ったときに相談できた。ひとりで判断しなくてよかったのです
- 結婚後も、関係が続いた。何かあったときに間に入る存在がいました
いま、この役割を担う人がほとんどいなくなりました。地域のつながりが薄れ、職場で縁談を持ってくる上司もいなくなり、紹介する側の負担だけが残ったためです。
結果として、すべてを自分でやることになりました。探し、判断し、断り、次に進む。この負担の大きさが、いまの婚活のつらさの正体です。
価値観の重なりを、どう確かめるか
「条件ではなく価値観で」と言われても、価値観は目に見えません。確かめる方法があります。
1. お金の使い方を見る。店の選び方、支払いのときの動き、金額の話をするかどうか。言葉より、行動に出ます。
2. 時間の使い方を聞く。休日をどう過ごすか。「何をするか」より「誰と、どのくらいの密度で過ごしたいか」のほうが、生活の相性に直結します。
3. 他人への接し方を見る。店員さんへの態度、電話での話し方。自分への態度と、他人への態度の差を見てください。
4. 予定が崩れたときの反応を見る。電車が止まった、店が閉まっていた。想定外のことが起きたときに、その人の余裕が出ます。
5. 意見が違ったときの扱い方を見る。押し通すか、話し合えるか、黙り込むか。違いがあること自体は問題ではなく、扱い方が問題です。
6. 家族の話をどうするか。実家との距離、親のこと。結婚後の生活に、直接関わります。
これらは、プロフィールには書かれていません。会って、一定の時間を一緒に過ごさないと分かりません。だから、やりとりを長く続けるより、早めに会うほうが有効なのです。
判断の材料は結婚の決め手に、確かめる機会の作り方もまとめています。
「縁を待つ」と「縁を作る」の違い
縁という言葉には、受け身の響きがあります。ここが誤解を生みやすい部分です。
「縁があれば、いつか出会える」——この考え方には、落とし穴があります。待っているだけでは、出会う機会そのものが生まれないためです。
実際には、縁は次のような形で生まれます。
- 出会う場所に、身を置く。アプリでも、相談所でも、地域の活動でも
- 自分から動く。「いいね」を送る、会う提案をする
- 合わない相手と、早く分かれる。これも縁を作る行為です。時間が空くから、次に出会えます
- 会ったあとに、関係を育てる。連絡を返す、次の約束をする
つまり、縁は「与えられるもの」ではなく、「動いた結果として生まれるもの」です。
ただし、力ずくで作るものでもありません。合わない相手と無理に続けても、続きません。動きながら、合う人が現れるのを待つ——この両方が必要です。
「縁がなかった」という言葉は、うまくいかなかったときに使う言葉です。けれど、その前に「縁を作るために動いたか」を確かめてください。動いていない状態で使うと、その言葉が動かない理由になってしまいます。
よくある質問
条件を見るのは悪いことですか?
丁寧に進めると、時間がかかりませんか?
「縁がなかった」と思うのは、あきらめですか?
条件をどこまで下げればいいのでしょうか
「ご縁がありましたら」と言われました。脈はありますか
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